日本国内企業におけるアメリカ人同僚との交流記(7)

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 アメリカ人同僚:Jさんとの交流記7回目です。

 Jさんが私と同じグループに配属されてから既に1年以上が経っています。今回は、Jさんの日本語運用能力を評価してみたいと思います。残念ですが、この一年でそんなに進歩したとはいえません。具体的に述べますと・・・

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 彼に送られてきた電子メールが日本語の場合は読むのが面倒らしく、信頼性に欠けるのを承知で英語への自動変換機能を使い読んでいます。「これでも何となく解る」とか言っていますが、他の日本人社員ならば当然知っているはずの情報が伝わっていないということが良くあります。

 日本語を使い電子メールを送ることはできるのですが、文法・敬語をマスターしているとは言えない状態です。それでも相手に真意が伝わればいいのですが、不適切・不十分な表現が相手に推測の余地を与えてしまうこともあります。

 実験などのテストレポートをすべて日本語では書けません。最近は、ほとんど英語で書いている状態です。

 私とは英語のみで会話しているので問題ないのですが、部内の他の社員とは殆どすべて日本語で話さざるを得ません。Jさんに対して日本語を丁寧にゆっくりとしゃべってくれる親切な社員も少数いますが、多くの人は気を遣いません。日本人の仲間内でしか通用しない日本語をバンバン使い、しかも早口の人が結構います。Jさんは時々聞き取れる日本語を頼りに推測を重ねて相手の真意を汲み取っているようです。しかし、その推測は100%正しい訳ではないので「Jさんは理解してくれていると思ったのに、なぜ?・・・」、という嘆きが時々聞こえてきます。彼の直属の上司は特に困るケースが多いですね。
 では、「日本語を丁寧にゆっくりしゃべればJさんは理解してくれるのか?」と問われれば、答えはNoです。試しに私が簡単な日本語で喋りかけてみても、英語の時のように反応してくれず、目が宙を浮いている(理解していない)ことが意外に多いのです。理解できない場合、「解りません」とはっきり言わず、解ったふりをしてしまうことが多いようです。

 Jさんの日本語Speakingも残念ながら進歩しているとはいえません。基本的な文法の勉強を怠っていることがすぐに判る状態です。日本人のように流暢にしゃべる必要はありませんが、簡単な自分の意思を伝えるのにすごく苦労しているケースがよく見受けられます。見るに見かねて、「英語でしゃべっていいよ。」と気遣いを見せる者もいます。

 次に、Jさんの日本語運用能力があまり(ほとんど?)進歩していない理由・原因を考えてみました。大きく分けると以下の5つです。
1)
 仕事を進めるには、他グループ・他部門・社外の関係者と様々な手段を用いてコミュニケーションをしなければなりません。しかし、Jさんは新人であり仕事のやり方が良く解っていないため、周りの人間が代わりに段取りをしてあげることが多いのです。このような配慮が結果的にJさんの日本語使用機会を奪っていたのです。パソコンの画面を見ながら設計や文書作成をしたり、現場で物を相手にテストをすることはしますが、人とのコミュニケーションをあまりしなくて済む立場だったんですね。
2)
 レポートを書く場合は、日本語に不慣れだという理由で英語での記述が許されています。「変な日本語を読まされるよりは、英語の方がマシだ」という上長の判断もあるのでしょう。結果として、Jさんの日本語Writingの機会が少なくなっています。
3)
 自分の仕事内容を英語で書かれた資料を使ってみんなの前で説明する場合がJさんにはあります。説明は英語で行うことがほとんどです。聞く側の人間があらかじめJさんの仕事内容を理解しているのであれば、たとえ英語を部分的に聞き取れなくても資料を見れば言いたいことを理解できることが多いです。このような状況は結果として、Jさんの日本語Speakingの機会を少なくしています。(日本人社員のListening訓練には役立っています。)
4)
 1)でも述べた通り、周囲の人間が仕事の段取りなどの世話をしてくれるので電話をする必要がほとんどありません。それでも電話の必要性が皆無というわけではないのですが、そういうときは周りの社員が代わりに電話対応をしてあげていました。「たまには自分で電話してみたら?」、と挑戦することを勧めても、Jさんは日本語による電話スキルがダメなので躊躇してしまいます。
 電話は音声だけが頼りであり、面と向かって会話する時よりも理解の助けとなるものが少ないためハードルが高いのです。気が進まないのも無理はありません。それでもJさんはプライベートでは日本語で電話をしなければならない場合があります。引っ越し直後、ガス・水道・電気などの契約で担当者と電話でやりとりしたときは大変苦労したそうです。
5)
 電子メールを読むときは信頼性のない自動翻訳に頼ることが多く、その滅茶苦茶な「英文」を理解できなくても放置しています。「メールの日本語が解らなかったら、いつでも私に訊いてくれ」と言っているのですが、やはり面倒臭いせいかなかなか質問はしません。メールによる指示・連絡内容の理解不足が露呈し何か不都合が起きても今のところは大目に見てもらっています。しかし、このような状況はJさん自身の切実感の欠如につながっています。

 上記1)〜5)の状態を今後もずっと続ける訳にはいきませんから何らかの対策が必要です。既に実行済のものも含めて以下に列挙します。
A)
 なるべく自分で電話をしてもらいます。まだ不慣れなので私が隣で助けています。事前にやり取りする内容を一緒に確認し、日本語表現などを事前に準備しておくことが重要です。
B)
 仕事の段取り・調整もJさん自身にやってもらいます。まだ一度も話したことがない人とも、必要ならばどんどんやり取りしてもらいます。
C)
 時々ですが、Jさん宛に送られてきた日本語電子メールの内容を理解できているかチェックします。パソコン画面上でメールを開いてもらい、確認のため意味を説明してもらいます。理解できていなければ教えます。
D)
 Jさんが社外へ向けて送る電子メールについては、正しく適切な日本語表現になっているか、また、内容に過不足が無いか事前に私がチェックすることがあります。正しいメールの事例が増えればJさんのノウハウ蓄積にもつながります。
E)
 まだ余り実行できていませんが、レポートを含め様々な社内文書を日本語のみで記載してもらう必要があります。私を含め周りの社員がチェックや指導で協力する必要があります。

最後に:
 採用した社員がたとえアメリカ人であっても、公用語が日本語の会社において英語だけを使って仕事をするのは無理です。日本語の使用を要求される場面は必ずあります。Jさん自身も今の日本語レベルのままでは不自由しますし、周りの人も迷惑し、結果として仕事に悪影響を与えます。言葉という一つのツールが原因で、仕事に支障を来す訳にはいかないのです。
 Jさんにとって少し大変な時期が続くかもしれません。しかし、日本語が上達すればJさん自身の仕事の幅や人脈が広がり、仕事の成果も出しやすくなります。さらに日常生活でも便利さを享受することができるようになるでしょう。

次回に続きます。

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投稿者:

J IWASAKI

J IWASAKI

大学卒業後、民間企業に長年勤めてきました。 英語学習に関しては殆ど独学ですが、TOEICで950点に到達しました。 このブログでは、私が効果的と考えている英語学習方法を紹介しています。 また、英語ニュースに関しても自分の考えを交えながら解説しています。 出来る限り平易に書いていますので、気軽に読んでください。