英字新聞で情報を得よう!(22)・・・最高裁判所は正しい判断をするところか?

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 生後20か月の娘を虐待して殺した両親に対する最高裁判決が7月24日に言い渡されました。父親は懲役10年、母親は8年だそうです。裁判員裁判による大阪地裁での判決は両親とも15年の懲役であり、大阪高等裁判所もそれを支持していたのですが、最高裁が大幅減刑したのです。過去の判例とのバランスが悪いのが理由だそうです。前例重視の保守的判断の典型ですね。

 最高裁判所の裁判官は内閣から任命されますので、時の権力者のご機嫌をとる傾向が強いです。お上のご機嫌取りを拒否するような人間が最高裁判事の候補者になることはあり得ません。特に安倍政権になってからは各分野に対する締め付けがきつくなっていますので、保守的な判事たちが過剰反応したとしても不思議ではありません。

 安倍政権はご存知のとおり戦前日本のような上意下達社会を目指しています。裁判員裁判で市民の良識が反映され、その結果、前例踏襲が打ち破られた事例を心よく思いません。意見を上に言う市民の存在を許したがらないのが大きな特徴です。幼児虐待死事件の過去の事例では懲役は数年〜10年でしたから、それを大きく逸脱する判決が市民の力で実現してしまうと安倍総理のご機嫌を損なうことになるでしょう。「頭のいい」最高裁判事は具体的に指示されなくても保守政治家の心情に配慮する能力を持っていますので今回の前例踏襲減刑判決につながった訳です。

 法曹界という狭い世界の人間だけに裁判を任せていると市民の良識とかけ離れた非常識判決が連発されてしまうので、それを防ぐのが裁判員裁判導入の目的でした。時間と労力をかけて一生懸命裁判に参加していた市民たちは白けた気持ちで今回の最高裁判決を聞いていたと思います。「馬鹿馬鹿しい!」「前例踏襲が一番大切ならば市民が参加する意味は無い!」というというのが本音でしょう。今回の最高裁判決では「裁判員裁判で過去の判例に囚われない判断をすることを否定しない」「判決の傾向は固定化したものではなく、社会状況や市民の意識変化に伴って変化し得るもの」などと書いていますが、建前でしょうね。

 今後の裁判員裁判では、一般市民の献身的な協力が減ることを覚悟するべきです。

 言うまでもないことですが一番大切なのは、抵抗する術もなく僅か生後20か月で殺されてしまった子供の視点です。市民が参加したことで裁判所は次のような視点を持つことが出来たのです。

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「立場の弱い子供を虐待し殺すのは重罪だ。」
「気に食わないという理由で大人を縛り、集団でリンチして殺すのと同じことだ。」
「子供の人権は大人のそれよりも軽く扱われてはならない。今までの日本が異常だったのだ。」
「類似のケースでは過去の懲役は数年〜10年だが、あまりに軽過ぎた。」
「従来の軽い刑では、日本社会で無数に起きている虐待を減らすことはできない。」
「裁判所は判決で重い懲役刑を言い渡し、類似の殺人事件が再発するのを防止しなければならない。」

 最高裁判決の前、大阪地裁と大阪高等裁判所では、市民の良識・常識を反映させることで従来よりも重い懲役15年の判決を下しました。前例では10年以下が「常識」だったので色々と葛藤もあったでしょうが勇気ある判断だと思います。わずか生後20か月で無残にも殺されてしまった子供の視点に立ち、より良い社会実現のためにその死を100%活かそうという姿勢が感じられます。しかし、一番権威のある最高裁判決には説得力がありませんでした。前例とのバランスが一番重要だという説明からは何の進歩性も感じられません。殺した側の両親は減刑判決が出されてホッとしたでしょうが、殺された子供は最高裁判決をどのような気持ちで聞いていたんでしょうね?

 一番権威がある最高裁の下した判決だからといってあきらめる必要はありません。選挙の時には最高裁判所裁判官国民審査で一票を投じることができるのです。弱者の人権を軽視した今回の判決を支持した最高裁判事を全員罷免する意思表示を行いましょう。

 The Japan Timesの2014年7月29日付記事「Reflecting citizens’ views on justice」を以下に引用します。上記の私の考えを参考にしながら読んでみてください。

「The Supreme Court’s July 24 decision that reduced the prison terms of a couple convicted of fatally abusing their daughter has highlighted the difficulty in balancing the need, on one hand, to have ordinary citizens’ views reflected in criminal trials through their participation as lay judges and, on the other hand, to maintain consistency with judicial precedents.

中略

In rejecting the district and high court rulings on the couple charged with assault that resulted in the 2010 death of their 20-month-old daughter in Neyagawa, Osaka Prefecture, the top court sentenced the victim’s father to 10 years in prison and gave an 8-year prison term to the mother.
The Osaka District Court in its March 2012 ruling in a lay judge trial gave both 15 years in prison — 1.5 times longer than the 10 years sought by prosecutors — and the Osaka High Court last year upheld the district court’s decision.

中略

Records show that lay judge trials, in which randomly selected citizens sit alongside professional judges in district courts, tend to hand down harsher punishments on those accused of taking people’s lives, especially cases involving fatal child abuse, and sex crimes.

中略

The lay judge system is meant to have the views and sentiments of people at large reflected in criminal trials. If so, getting lay judges to respect precedents set by professional judges in earlier cases risks defeating the purpose of introducing the system. Criticism also persists that higher courts’ altering lay judge trial rulings in an increasing number of cases runs counter to the spirit of the system.

中略

As Shiraki noted, professional judges of district courts will need to fully explain to lay judges the trend and the significance of judicial precedents, so that they will hand down rulings based on a correct understanding of the precedents. Such a process will be necessary to minimize the risk of unfair judgments. But there will also be a risk that such efforts could result in professional judges putting conformity with precedents ahead of having the input of lay judges reflected based on their perspectives as ordinary citizens — and in lay judges being discouraged from moving beyond precedents.

以下略」

以上

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投稿者:

J IWASAKI

J IWASAKI

大学卒業後、民間企業に長年勤めてきました。 英語学習に関しては殆ど独学ですが、TOEICで950点に到達しました。 このブログでは、私が効果的と考えている英語学習方法を紹介しています。 また、英語ニュースに関しても自分の考えを交えながら解説しています。 出来る限り平易に書いていますので、気軽に読んでください。