死刑制度を廃止すべき根本的な理由を考える

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死刑執行新聞記事
 最初に、2015年1月25日付の毎日新聞英語版記事「80% of Japanese in favor of death penalty: gov’t survey」(国の調査結果:国民の8割は死刑制度に賛成)から、一部を以下に引用します。( )内は私の日本語訳です。

The percentage of Japanese people in favor of the death penalty totaled 80.3 percent, down from a record 85.6 percent in the previous survey in 2009, according to a government poll released Saturday.
(土曜日に発表された政府の調査結果によると、死刑制度に賛成の国民は80.3%であり、前回2009年の85.6%より下がった。)

In the latest survey, which asked for the first time about the possible abolishment of the death penalty if the life sentence is introduced in Japan, 37.7 percent of respondents said it should be abolished, while 51.5 percent said it should not.
(最新の調査では、もし日本で終身刑が導入されたら死刑を廃止できるかどうか初めて質問された。廃止すべきと答えたのは37.7%に対し、廃止すべきでないは51.5%であった。)

Of the respondents opposing execution, 46.6 percent said it would be irrevocable if an accused person was in fact innocent, up 3.4 percentage points from the previous survey.
(死刑に反対している者のうち46.6%は、冤罪だった場合取り返しがつかないと答えている。前回調査時より3.4%の増加だ。)

The respondents may have been affected by the court decision last year to suspend Iwao Hakamada’s death sentence and reopen his murder case after nearly half a century of detention.
(昨年、半世紀近く拘束されていた袴田巌さんの死刑判決が取り消され再審開始が決まった。裁判所のこの決定が調査の回答者に影響した可能性がある。)

Some 41.6 percent said the perpetrators should be kept alive to pay for their crimes, while 38.8 percent said executing people is unforgivable even for the government.
(死刑反対派の約41.6%は、犯罪者は生きて罪を償うべきだと答えている一方で、38.8%の人は、政府であっても死刑執行は許されないと言っている。)

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In expressing their preference for execution, 53.4 percent said the feelings of victims and their families would not be satisfied if the death penalty is abolished, while 52.9 percent said perpetrators of heinous crimes should pay for their crimes with their lives, and 47.4 percent said a risk remains that similar crimes could be repeated if they are kept alive.
(死刑賛成派のうち53.4%は、死刑制度が廃止されたら犠牲者やその家族の気持ちが収まらないだろうと答え、また、52.9%の人は、重大犯罪を犯した者は命を持って罪を償うべきだと考えている。さらに、犯罪者を生かしておくと同種の犯罪が繰り返される恐れがあると47.4%が回答している。)

Of those respondents, 40.5 percent said the death penalty could be abolished if the situation changes in the future.
(全回答者の40.5%は、将来的に状況が変われば死刑制度を廃止することが可能だと言っている。)

 次に、日本国内における死刑制度賛成側・反対側双方の主な論点を並べます。

1)死刑制度賛成派の根拠
①被害者及びその親族の無念を晴らすべきだ。
 復讐したいという気持ちに応えるべき、ということですね。最高裁判所も「国民感情」という曖昧な言葉を用いて死刑制度を認めています。では、被害者の遺族が「殺さないで生かしておいて欲しい」と申し出たら、加害者は死刑を免除されるのでしょうか?被害者側のその時の考え・感情により死刑の可否が判断されるというのも変ですね。

②加害者を生かしておくと再び事件を起こす可能性がある。
 刑務所に入れておけば大丈夫のはずです。そのための刑務所なのですから。終身刑の制度を導入することも可能でしょう。(但し、警察による冤罪事件では真犯人が長期間野放しになってしまうケースがあります。)

➂加害者を生かしておいても社会に貢献できず意味が無い。
 では、高度な専門知識を持っている者であれば死刑を免除してもいいのですか?

④刑務所に一生収監しておいても更生の見込みが無く税金の無駄である。
 では例えば、億単位のお金を支払う能力があれば、死刑を免除してもいいのですか?

⑤死刑制度という厳罰の存在が、他の犯罪を抑止する効果がある。
 現時点で、抑止効果は統計的に証明されていません。

2)死刑制度反対派の根拠
①冤罪事件が後を絶たない。
 司法制度の欠陥や警察組織の証拠捏造・自白強要により犯人に仕立て上げられてしまう悲劇が、日本では無数に起こってきました。冤罪被害を受けたひとは人生を滅茶苦茶にされてしまいます。死刑を執行した後に冤罪が判明したら取り返しがつきません。
 では、冤罪被害が出ないような司法システムを導入すれば、死刑制度に反対の人も賛成派に変わるのでしょうか?

②憲法違反である。
 日本国憲法第36条で「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」と定められています。しかし、最高裁判所は「絞首刑は人命を奪う刑罰だが残虐ではない」などと述べています。絞首刑は違憲でないと言われても説得力が無いですね。

➂死刑制度があっても犯罪を抑止する効果が無い。
 その通りです。犯罪を抑止する目的で死刑制度を存続させるのは不合理です。

 上の記事内容を踏まえた上で、私の考えを以下に述べます。

私の結論→「死刑制度は廃止すべきです」
理由:
 「死刑にしてやりたい」と思わせるような凄惨な事件を起こした加害者は、事件を起こすべく運命付けられてこの世に生を与えられたわけではありません。教育環境も含めた社会システムの不備・欠陥により人格形成が十分になされず環境への不適応を起こしているのです。つまり、加害者であると同時に被害者でもあるのです。
 社会システムの欠陥によるしわ寄せは一般庶民の中の立場が弱い者へ行きやすく、特に未成年では本人の努力のみでこれを克服することは困難なことが多いのです。運悪く社会に害を与える存在になった者は、その社会の欠陥・本質を映す鏡であり、社会の他構成員と無関係ではありません。確かに厄介者をこの世から抹殺してしまえば、社会制度や我々自身の欠陥と向き合う必要は無くなります。しかし、「臭い物に蓋」という態度は人間社会の進歩を妨げます。原因を究明せず議論もせず対策もせずに放置すると、同じような事件・悲劇が必ず繰り返されるのです。
 再発防止対策を実施しなければ暮らし易い社会を実現することはできません。現在も存続している死刑制度は「臭い物に蓋」「厄介払い」という安易な姿勢の表れでもあり、人間社会を進歩させようとする姿勢には思えません。時間・お金・手間がかかる地道な検証・改善作業を積み重ね、暮らし易い社会の実現のために努力するのは国民一人一人の義務です。
 この努力を実行する為には事件を起こした本人が生きている必要があります。死んだら本人と話をすることすら出来ません。取り調べや裁判の記録などは情報の一部に過ぎないのです。

以上

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投稿者:

J IWASAKI

J IWASAKI

大学卒業後、民間企業に長年勤めてきました。 英語学習に関しては殆ど独学ですが、TOEICで950点に到達しました。 このブログでは、私が効果的と考えている英語学習方法を紹介しています。 また、英語ニュースに関しても自分の考えを交えながら解説しています。 出来る限り平易に書いていますので、気軽に読んでください。