まず、赤ん坊の時期から日本語を聞くという学習が始まります。学習心理学や発達心理学の教科書を紐解き、幼児が言語を習得する方法や特徴を以下に記します。
1)小学校就学前の幼児期までに約3000語の単語を覚えてしまう。これは、幼児の日常生活では意思疎通に不自由が無いレベルである。
2)幼児期の後期までが極めて重要である。思春期以降に言語を新たに学習する場合のプロセスは、幼児期までのそれと異なる。
3)幼児期の終わりまでに驚異的なスピードで言語を習得するのは、人間だけに与えられた特殊な能力である。
4)親など周囲の大人たちからの語りかけが言語学習を促進する。
5)乳児〜幼児期に言語を習得するプロセスは複雑であり、科学的にははっきりと解明されていない。
6)幼児期までに習得するリスニングとスピーキングとは別に、読み書き能力は小学校以降に授業でしっかりと訓練を受ける必要がある。
幼児であっても朝から晩まで日本語に触れながら勉強しているんですね。勉強だと意識していないことが多いと思いますが・・・。学校に入った後の読み書き訓練でも多くの時間と手間を費やしてようやく卒業となります。
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学校卒業後に社会で仕事をするようになっても日本語の運用に不自由を感じることが多いはずです。読解力に劣る人は本を購入して自己啓発に励むこともあるでしょう。人としゃべるのが苦手な人もいます。交渉力が無い50過ぎの管理職というのは憐みの対象となりますが、年齢を重ねればコミュニケーション能力が自然と身に付くわけではなく、やはり個人で努力することが必要です。ライティングも技術ですから意識して身に付けようとしなければなりません。特に、複雑で難しい事柄を解り易く簡単に説明する時には高度な技量が要求されます。
母国語である日本語であっても学習に終わりはなく、死ぬまで続くと考えた方が良いでしょう。聞く・話す・読む・書くの4技能すべてが高レベルの人は稀だと思いますが、各個人が各々の立場で必要なレベルを満たすべく日々努力を続けているのです。
英語を母国語とする英語圏の人たちも我々日本人と同様の努力を毎日続けているのです。流暢に英語を操れるようになるまでには、途方もない時間と手間をかけてきたのです。日本人が外国語として英語を習得するためにも大変な手間と時間を要します。何かの家電の操作方法とは異なり、短期間で楽して習得することはできません。王道はありません。終わりのない長い長い旅なのです。
上記は厳然たる事実ですが、これに反するタイトルの書籍を最近、本屋の英語コーナーでよく見かけます。例えばこんな感じ・・・
「このフレーズだけおぼえれば英語が喋れる」
「これだけやればTOEIC○○点取れる」
「聞き流しをしていればOK」
要するに「楽して短期間で英語を習得する方法」ということですね。出版社がこのような感じのタイトルを付けたがるのには理由があるはずです。
「最近、仕事で英語を使わねばならない人が増えてきた。就職や昇進試験でTOEICの点数を要求される人も多くなっている。多くの人が英語学習に取り組んでいるが挫折する人もかなりいる。英語学習に時間と手間を掛けたくない人の割合は高い。楽して短期間で成果を得る方法を強調してタイトルにすれば手に取ってもらえるだろう・・・」
まあ、こんなところですかね。この種のマーケティング戦略自体を全否定する気はありません。しかし、「楽して短期間で英語を習得する方法が世の中に存在するんだ」という勘違いをさせられる人が少なからずいるでしょうから、迷惑なことも確かです。
TOEICの点数が300点程度の初級者が、英語上級者としてあまり不自由なく運用できるようになる為には、毎日地道に学習を続けても最低10年はかかります。これが私の本音です。特に英語初級者の人は、「楽して短期間で英語を習得する方法」に飛びつきたがると思いますが、うっかり信じるとあとでガッカリしますから無視してください。無視しない場合であっても参考程度に留めておくのが賢明でしょう。
まとめ:
繰り返しますが、英語学習に王道はありません。手間と時間がかかる終わりのない長い長い旅なのです。楽して短期間で習得できると思ってはいけません。
以上