福島原発事故の海外報道を紹介します:国連特別調査官の日本政府批判

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国連担当者
国連特別調査官のAnand Grover  写真の出典はKazuhiro Nogi, AFP/Getty Images

 ご存知の通り、東京電力の福島第一原子力発電所の事故ではチェルノブイリ以上の放射性物質が放出され、世界中に大迷惑を掛けました。現在も放出は続いており、東日本全域で健康被害の心配をしなければならない状態です。

 この場合普通に考えれば、東日本の住民全員(数千万人レベル?)を政府の負担と責任で安全な場所に避難させ、生涯に渡り健康診断と医療サービスを無料で受けられるように保証しなければなりません。避難先での仕事・収入・生活は不自由しないように政府が責任を持つ必要があります。原発というのはコストがかかり、事故が起きたら取り返しがつかないのです。

 しかし、事故後の政府の対応はお粗末なものです。チェルノブイリ事故後の強制移住基準は5ミリシーベルト/年以上なのに、20ミリシーベルト/年以上という緩い基準で立ち入り禁止区域を決めたのです。原発周辺のごく限られた地域です。100ミリシーベルト/年までなら健康への心配はいらないとさえ言っています。数ある研究論文のうち自分たちに都合の良い物だけをつまみ食いしているのですね。

 政府の援助による健康診断の対象となったのは福島県民の一部だけです。しかも、健康診断を受けた本人はその結果を知ることができないのです。政府は何を隠したがっているんですかね。さらに、破壊された福島原発で働く作業員達は住民と同じ健康診断を受けることが出来ません。健康被害を一番受けやすい作業員達のことを一番軽んじているのが良く解ります。

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 上記のように政府は、事態を軽く評価し騒ぎが大きくならないように気を使っています。原発マフィアたちの利権を守る為にも原発再稼働は必須ですから、反対の声を抑え込みたいのでしょう。政府の御用メディアに成り下がったマスコミは論外ですが、日本国民は情報弱者として被害を受けるしかないのでしょうか?

 国連の特別調査官が日本政府のお粗末な施策を批判している英文記事を見つけました。日本のマスコミだけに頼っていると情報が不十分になりますから、外からの視点を補いましょう。
 詳細は下記リンクからご覧ください。The Associated Press:2012年11月26日付の記事です。( )内は私の日本語訳です。

「U.N. envoy: Japan should do more for nuclear victims」
(国連行使:日本政府は原発事故被害者への対応を手厚くすべき)

 上記リンク英文記事の一部を以下の「 」に引用します。( )内は私の日本語訳です。参考にしてください。

「Anand Grover, U.N. special rapporteur on the right to health, said the government has adopted overly optimistic views of radiation risks and has conducted only limited health checks after the partial meltdowns at several reactors at the Fukushima Dai-ichi nuclear power plant caused by an earthquake and tsunami in 2011.」
(健康の権利に関する国連特別調査官であるAnand Groverは次のように述べた。「2011年の地震と津波により福島第一原子力発電所の原子炉のうち一部が炉心溶融を起こして以降、日本政府は放射能の危険性に対してあまりに楽観的であり、実施した健康診断も極めて限られている。」)

「Although he welcomed ongoing health checks of affected residents, Grover said they were too narrow in scope because they are only intended to cover Fukushima’s 2 million people, and that only children are being given thyroid tests, even though the impact of radiation went far beyond Fukushima’s borders.」
(被害住民に対する健康診断が現在行われていることは歓迎する、としながらもGroverは次のように述べた。「放射能の被害は福島県以外の広範囲に広がっているにもかかわらず、健康診断の対象者を限定し過ぎている。福島県の200万人だけに限定しようとしているし、甲状腺の検査は子供だけが対象となっている。)

「He said the health survey should cover “all radiation-affected zones” stretching across much of the northeastern half of the main Japanese island of Honshu. So far, only one-quarter of Fukushima’s population has been covered.」
(Groverは次のように述べた。「本州の東半分を放射能被害地域として健康調査を実施すべきだ。今のところ、福島県住民の四分の一が対象となっているに過ぎない。」)

「Many nuclear plant workers on short-term contracts have no access to permanent health checks, and many residents complained that they have not been allowed access to their own health check results, Grover said.」
(Groverは次のように述べた。「短期契約で働く原発作業者は大勢いるが、彼らは健康診断を生涯に渡り受ける権利を保障されていない。また多くの住民は、自分が受けた健康診断の結果を知ることができないと不満を漏らしている。」)

「”The scope of the survey is unfortunately narrow as they draw on the limited lessons from the Chernobyl accident and ignore epidemiological studies that point to cancer as well as other diseases in low-dosage radiation,” Grover said. 」
(Groverは次のように述べた。「チェルノブイリ事故の教訓を十分に活かしておらず、また、低レベル放射線により癌などの病気が発生することを指摘した疫学的研究を無視している。その為、残念ながら健康調査の範囲が狭くされている。」)

「He said the government’s use of a radiation threshold of 20 millisieverts per year — an annual cap set for nuclear industry workers that is more than 10 times the three-year limit for ordinary citizens — in determining off-limits areas around the plant conveys a misleading message that doses up to that level are safe.」
(Groverは次のように述べた。「原発作業者が一年間で浴びることが許される放射能は20ミリシーベルトだが、それは一般市民の3年間許容値の10倍以上に当たる。日本政府は原発周辺の避難区域を決める際、その20ミリシーベルト/年という閾値を用いた。そのレベルまで放射能を浴びても安全だという誤ったメッセージを発信してしまっている。」)

「He said in Chernobyl the obligatory resettlement threshold limit was just one-quarter of Japan’s.」
(Groverによると、チェルノブイリで強制移住の判断基準となる放射能閾値は日本の四分の1に過ぎない。)

「Grover also said the government should work harder to include residents in decision-making, monitoring and implementation of measures that affect their health.」
(Groverはまた次のように述べた。「住民の健康に影響を及ぼすような対策を決定・監視・実行する時に、日本政府は当事者住民の声にもっと耳を傾けるべきだ。」)

以上

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投稿者:

J IWASAKI

J IWASAKI

大学卒業後、民間企業に長年勤めてきました。 英語学習に関しては殆ど独学ですが、TOEICで950点に到達しました。 このブログでは、私が効果的と考えている英語学習方法を紹介しています。 また、英語ニュースに関しても自分の考えを交えながら解説しています。 出来る限り平易に書いていますので、気軽に読んでください。