生活保護制度は生きていく上で困難に陥った場合の命綱です。誰でもお世話になる可能性があるのです。
今は元気でバリバリ働き給料を得ている人でも、事故・病気・怪我などで動けなくなり収入が途絶えてしまう場合があります。貯蓄が底をつき、ローンも払えず立ち退きを迫られ、路頭に迷うかもしれません。今でも2000万人以上いる非正規社員が高齢者になったら、貯蓄も無く、雀の涙の年金で生活できなくなる可能性が高いです。貯金できている人であっても、将来、日本国債が無価値と判断されればハイパーインフレが起きますので安泰ではいられないのです。
繰り返しますが、誰でも金銭的に窮地に陥る可能性があり、それ故、お互いが助け合えるシステムは人間社会に不可欠のものです。生活保護の給付を受ける権利は法律により保障されています。別に卑屈になる必要はなく、権利として堂々と受け取り、受け取った金銭は自分の財産として自分の責任で管理するのが原則です。
橋下徹が支配する大阪市が生活保護費の一部について使い道を管理する方針なんだそうです。三井住友カードの協力を得ながら、生活保護費をプリペイドカードで支給する事業を2015年4月から始める予定です。具体的内容を以下に挙げます。
・VISAカード加盟店でのみ購入が可能である。
・誰がいつどこで何をいくらで購入したか管理・把握できる。
・ケースワーカーが生活保護受給者に対して、お金の使い道についてアドバイスできる。
・一日の使用金額上限を設定できる。
・購入可能な物品を制限できる。
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このような施策を実行すると当然、次のような問題が発生します。
・プライバシーの侵害である。
・自己決定権の侵害である。
・生活保護制度を利用してカード会社が利益を上げるので、貧困ビジネスを助長する。
→大阪市だけでなく全国にこの制度が普及すれば、カード会社は多くの天下り役人を受け入れることになると思います。
・生活保護受給者がはずかしめられ不愉快な気持ちにさせられる。社会への不信感を助長する。
・「生活保護受給者は信用できないので子ども扱いして良い。監視して当然。」という意思表示を公に行うことになる。→受給者への偏見を助長する。
・結果として、ますます暮らしにくい世の中になる。富裕層にとっても安心できない社会が続く。
橋下徹大阪市長が、このような愚かな施策を全国に先駆けて実行しようと決意した理由は何でしょうか?割合としてはごく一部に過ぎない不正受給者に対する憎しみでしょうか?正当な受給者たちであっても、自分と対等の人間と認めていないのでしょうか?自分が生活保護制度の世話になることは絶対にない、という根拠のない自信があるのでしょうか?カード会社を巻き込むと何かオイシイ思いが出来るのでしょうか?
この問題を、Japan Press Weeklyが2014年12月28日付の記事で扱っています。
Osaka City will closely monitor the needy(大阪市が貧困者を細かく監視する予定)
上記リンクの記事から英文を引用します。( )内は私の日本語訳です。参考にしてください。
The Osaka City government, in cooperation with a credit-card company, is seeking to monitor and control what welfare recipients spend their livelihood protection benefits on.
(生活保護受給者のお金の使い道を監視しコントロールすることを大阪市は目論んでいる。実施に当たりクレジットカード会社の協力を得る予定だ。)
Experts warn that the plan will encroach on their fundamental human rights.
(この計画は基本的人権の侵害につながるだろうと、専門家は警告を発している。)
Osaka City Mayor Hashimoto Toru on December 26 announced that the city will launch the nation’s first model project providing a portion of livelihood assistance benefits with prepaid cards for living expenses, including food.
(生活保護費の一部をプリペイドカードで支給するという全国で初めてのモデル事業を大阪市で開始すると、橋下徹市長は12月26日に発表した。食料を購入するための生活費も含まれるという。)
By doing this, “Caseworkers should give guidance to welfare recipients (on usage details),” said the mayor.
(情報を集めて、ケースワーカーは受給者に対してお金の使い道を細かく指導すべきです、と市長は言った。)
Osaka City will hook up with Mitsui Sumitomo Card Company, and residents receiving welfare benefits will use that card to buy items at VISA-affiliated stores.
(大阪市は三井住友のカード会社と協力し、生活保護受給者の住民はそのカードを使いVISA加盟店で物品を購入することになる。)
The city will set a per-day limit and restrict card transactions to specific items. The project will start in April.
(大阪市は一日あたりの使用限度額を設けて、カードでの購入ができない物品を指定する予定だ。この施策は4月から始まる。)
Kuroda Mitsuru, an expert in municipality policy studies, said, “The project may infringe on constitutional rights by determining how individuals can best use their welfare benefits.”
(市政の研究者である黒田充は次のように述べた。「生活保護給付金の使い道を他人が指図するこの施策は、憲法で保障された権利を侵害する可能性がある。」)
以上