私が勤めている会社の中で、日本人の従業員と、社外から来たイタリア人が英語で会話をするケースを目にしたことがあります。その日本人は海外留学経験がありイタリア人よりも英語を使い慣れていました。しかし彼は相手のイタリア人が理解できているかどうか気にかけず一方的にしゃべり続けることが目立ちました。聞き手のイタリア人は理解することを諦めて何の反応もしなくなることが結構ありました。
英語も含めて言語というのはコミュニケーションのための道具ですから相互理解に役立てることが出来なければ意味がありません。部下に対し「俺の言うことを黙って聞け。伝わっていない場合は理解できないお前が悪い。」、という態度でふんぞり返っている管理職を時々目にしますが、人間関係に軋轢を生じさせる原因になりますから真似したくありませんね。心理的な壁を作るのは良くありません。
相手の言ったことをしっかり理解し、それを踏まえて自分の意見を返して確実に相手に受け止めてもらう。相手はそれに対して再び自分の意見を発する。どうせ言葉を使うのであれば豊かな会話のキャッチボールをしたいものです。組織の中で多くの人と協力し、新しい価値を生み出さなければならない立場の人は特にそうでしょう。
スポンサーリンク
日本人が仕事のため英語で会話をしなければならない場合は、英語という言語の壁も乗り越えねばなりませんが、それには工夫が必要だと思います。具体的な例を挙げて説明します。
1)英語圏のネイティブスピーカーと日本人が英語で話す場合
誰が見ても英語力はネイティブの方が上です。日本人側は、英語のレベルアップをしたいのであれば少し気合いを入れて背伸びをするくらいでいいと思います。能力をフルに使って一生懸命やりとりしようとする姿勢は相手に伝わりますので会話での協力を得やすくなります。どうしても相手の言うことが聞き取れない場合はもう一度繰り返してもらうとか、自分で別の言葉に言い換えて真意を確認するなど、じっくり腰を落ち着ける必要があります。
こちらが熱心に英語で会話しようとしても、ネイティブ側が非協力的な場合もあると思います。いつもの自分のやり方を変えたくない、面倒くさい、忙しいなど気持ちは解らなくもありません。だからといって諦めてしまうことはできませんので、仕事を遂行するためにも粘り強くアプローチするべきです。
2)英語を母国語としない外国人(例えばイタリア人など)と日本人が英語で話す場合
日本人である自分の方が英語力が上の場合は、相手のレベルに合わせようとすることが大切です。意識してゆっくりしゃべり、単語や表現は簡単なものを選んだ方が無難です。そして、自分の言ったことがきちんと伝わっているかどうか、相手の目や表情を観察しながら確認する必要があります。ひどいイタリア語訛りで「英語」が聞き取れない場合がありますが、解ったふりをせずに立ち止まって確認に時間を費やすべきだと思います。
逆に、日本人である自分よりも相手の方が実力が上というケースもあります。その時は、1)で述べたネイティブ向けの対応でいいと思います。
3)3人以上で英会話をする場合
前記1)、2)は相手と2人で話す場合を想定しています。しかし、3人以上の人数で、かつ、1人以上の外国人を含む状況での会話もあり得ます。(全員日本人ならば日本語で話せばよい)
自分が英語でしゃべる時は他のメンバー全員に自分の意思を伝えねばなりません。ということは、一番英語レベルが低いと思われる人に合わせる必要があります。話の内容を理解できていない孤立者を生まないようにメンバー皆で協力すべきでしょう。
私の言っていることは理想論に聞こえるかもしれません。現実には時間的にも精神的にも余裕が無ければ実行は難しいでしょう。しかし、「孤立者を作ってはならない」という意識があるのとないのとでは大違いです。意識があれば、少なくとも孤立状況のさらなる悪化を食い止めようと努力するものです。
メンバーの一人である日本人の英語力が中学生レベルですらない場合は、英語で仕事上のやり取りを行うのは無理でしょう。だからと言って、その人に理解してもらうのを諦める訳にはいきません。「孤立者を作ってはならない」という前提に立つのであれば、英語ができる他の日本人があとで話の内容を伝えてあげるのが当然だと思います
日本語を話せない英語圏のネイティブスピーカー2人と英語の初歩もおぼつかない日本人の組み合わせは最悪のケースですね。その日本人に英語で話をして仕事を進めてもらうのは現実的ではありません。こういう時は、英語を使える他の社員に参加してもらうとか、外から通訳を連れてくるとか、事前準備が重要になります。その英語が苦手な日本人が決定権を持っている立場であればなおさらです。
まとめ:
会話の目的はお互いに理解し合い情報を共有することです。自分の英語力を誇示したいがために気遣いに欠ける傍若無人な振る舞いをすると基本的な信頼関係が損なわれる可能性があります。
また、英会話を実践した後は復習することが大切です。その日にしゃべった内容を振り返り、もっと良い表現がないかどうか調べておくべきです。同じような場面が再び遭遇する可能性がありますので、その時に備えて知識と経験を蓄積しておいた方がいいでしょう。実力がアップしスムーズな英会話を楽しめるようになれば、気遣いをされる側ではなく、する側になることができるのです。
以上
英会話フレーズブック―リアルな日常表現2900 (アスカカルチャー) 新品価格 |