他人が書いた文書をチェックし修正する立場の人は多いと思います。日本人ばかりの会社であれば、日本語の文書をチェックし日本語で修正内容を書き込んで返却するというパターンが一番多いのではないでしょうか?製品を海外に輸出する場合は英文の取扱説明書を添付することが多いですが、英文をチェックする時は修正内容を英語で書いて返却するのが普通でしょう。
日本語で書かれた文書に対して修正内容をわざわざ英語で記す、というケースは聞いたことがありません。しかし、その逆のケースはあり得ます。
私の同僚のアメリカ人Jさんが英語で作成した報告書を他の日本人社員Kさんがチェックし、指摘内容を日本語で記入し本人に返却したのです。Jさんは日本語が解らない訳ではないので、日本語で記入すること自体は悪くありません。しかし、その方法が問題でした。解りにくい表現を使い、しかも漢字などを崩して書いているので日本人でも解読に苦労する程でした。
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Jさんは、まだまだ日本語の読み書きに不自由している状態だったので、当然、何を意味するんだかさっぱり解らない。仕方がないので隣席の私に助けを求めてきたのでした。
英文報告書に日本語を書き込んで返却してきたKさんは、アメリカ人のJさんが日本語に不自由していることを当然知っています。しかし、英語で記載してあげられない理由もあるわけです。英文writingに不慣れであれば日本語を使わざるを得ないでしょう。しかしその場合も、解りやすい日本語表現を用いて文字も読み易いように丁寧に書くべきなのですが、そのような配慮は皆無でした。
英文報告書に日本語を殴り書きしながら日本人社員Kさんは何を考えていたのでしょうか?自分が書いたものを受け取った相手(アメリカ人)がどう感じるか、相手に理解してもらうためには何に気を付けねばならないか、などの思考は無かったに違いありません。
残念ながら、類似した事例は日本では珍しくないのではないでしょうか?会社でも地域社会でも日本人同士で日本語だけで意思疎通できるのが普通です。同じような価値観・考え方・感じ方を持った人間が集まり年数を重ねればそのような状況が当たり前になります。阿吽の呼吸で全てが伝わるようになればとても居心地がいいでしょう。そのような環境に突然外国人がやってきたら居心地の良さが危機に晒されるかもしれません。上司に対しては丁寧に対応する人間でも外国人の同僚にわざわざ配慮したくないと思うかもしれません。決して責めるつもりはないのですが、本当にこのままでいいのでしょうか?
「国際化に対応するために必要なことは何か?」と問われたら皆さんは何と答えますか?
①
「英語力を高めることが必要です。」というのも、もちろん一つの答えでしょう。Listening, Reading, Speaking, Writing、の各能力を高めていけば外国人と仕事をし易くなります。しかし英語力は国際化に対応するために必要な能力のうちトップに位置するものではないと思います。
②
「自分と違う立場・考え方・能力・価値観を持った相手とスムーズにコミュニケーションをするにはどうすればいいだろうか?ということを常に考える習慣を身に付けること」
→これが一番大切だと思います。
②の能力無いと様々な仕事上の問題を良い方向へ解決していくことは出来ません。新しい価値が生まれることもありません。確かに①の英語力はとても大切ですが、あくまで手段の一つなんですね。英語力が抜群でも②が欠落しているとトラブルが起こる可能性大です。②がしっかり身に付いている人でも①の英語力が無いと仕事上不自由しますが、言語手段は意識して補うことができます。②の能力が欠落している場合、本人ですらそれに気づいていないことが多いものです。改善されないままズルズルと長期間に渡り周囲に迷惑をかけ続けるので非常に厄介なのです。
国際化する環境に適応したければ、上記①、②の両方を身に付けるべく努力すべきだと思います。
以上