「仕事で英語を使います。ネイティブに通用する論理的な英文を書くには何を勉強したらいいでしょうか?」
私も長らく上記のような悩みを抱えてきました。確かにTOEIC用の勉強をすればビジネスシーンで良く用いられる表現を覚えられます。しかし、相手に自分の考えを伝えるには、まず日本語でしっかりと解り易く説明できる必要があるのではないか?日本語が解りにくくていい加減だったら英語に訳しても通じないのではないか?英語のロジックと日本語のそれは異なるのではないか?
これらの疑問に答えてくれるのが今回紹介する教材です。
「英語ロジカル・ライティング講座」ケリー伊藤著 研究社
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本書では、基本的に以下の流れで解説されています。
①日本文の例題が与えられる。
②そのままでは英訳しにくいので日本文を修正する。
➂適切な表現を用いた英訳の模範解答が示される。
まず、例題に用いている①の日本文が非論理的で解りにくいものが多いのです。論理的で解り易い日本文に修正しなければなりません。本書はこの②に相当する作業に一番力を入れて解説しています。
例題は合計100題あり、全て大学入試問題を題材にしているそうです。内容はバラエティに富んでいます。一番最後100題目の日本文を引用してみましょう。
「いつ結婚するか、子供を産むか産まないかなどは、各人の自由な判断によるべきだ。しかし、同時に少子化、高齢化が進むとどんな社会になるかは考えておいたほうがよい。今の傾向が続くと今後30年足らずのうちに、65歳以上の人が4人に一人を占める。」
この日本文は100題のうちでも最悪の部類に属する悪文です。筆者も「何が言いたいのかさっぱりわかりません。」と書いています。ロジックが通るように日本文を修復することが困難なので、以下のように、日本の高齢化を述べる文として大幅に変更しています。
「日本は世界中のどの国よりも速く高齢化が進んでいる。また先進国の中で初めて人口縮小が進んでいる国でもある。平均年齢と寿命は最高であり出生率は最下位である。この傾向が続けば2050年には10人中4人が65歳以上となる。」
我々日本人が普段使っている日本文をそのまま英訳してもネイティブには通用しないな、ということが、この100題目の本書解説を読むだけで理解できました。筆者も本書のはしがきで述べているように、「まず日本語においてロジックと格闘することが必要」なのです。
私はこの本を3回繰り返して取組みました。1回目と2回目は、いきなり解説を読まずにまず、自分で考えてみました。自分でつくった修正日本文と英訳は、筆者が提供するものと大分異なっていることがほとんどでした。筆者の解説と英文模範解答を理解することも大切ですが、まずは自分で考えるという姿勢はそれ以上に重要です。仕事で実践する時に頼れるのは自分だけなのですから。
「この教材に取り組めばTOEICで効率よく点数を上げられるのか?」と問われれば、答えは否です。TOEIC対策の先、仕事上の実践段階で真に必要な能力は何なのか?、そのことに気付かせてくれる一冊です。「英語を簡単に習得する方法」みたいなタイトルの本が流行っていますが、本書はそのような時流とは一線を画しており、好感が持てます。内容的にはなかなか手強いですが、英語と日本語に対する意識を変えてくれる良本です。
詳しい内容は、是非、本書を実際に手に取って確認して頂きたく思います。購入は下記からも可能です。
皆様のご健闘をお祈りいたします。
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以上